コールドチェーン
「食品流通の上流から下流までの物流業務をカバー
コールドチェーン機能で食の「安心・安全」を実現」
原材料や資材の調達から、工場での生産、販売に至る一連のモノの流れを一気通貫で管理して全体最適を目指すサプライチェーンマネジメント(SCM)。食品業界において、冷凍(フローズン)や冷蔵(チルド)といった温度帯での管理を必要とするサプライチェーンは、コールドチェーンとも呼ばれています。食の「安心・安全」への意識の高まりや、地球温暖化による気温上昇などを背景に、従来は常温対応で済ませてきた食品アイテムの低温管理への移行が進むなど、近年コールドチェーンに対するニーズは拡大傾向が続いています。
それに伴い、当社では、きめ細かい温度帯管理が可能な物流施設(冷凍・冷蔵倉庫)の開発、全国をカバーする輸配送ネットワークの構築、食品知識が豊富なスタッフの教育・育成に取り組むなど、コールドチェーン機能の拡充を進めてきました。

日本のコールドチェーンは長らくメーカー〜卸〜小売りの店頭までを管理の範囲としてきました。しかし現在では、食品ネット通販の普及で、その範囲がラストワンマイルの領域(消費者宅など)にまで広がっています。それによってコールドチェーンを支える物流会社には、小口での出荷(ピース単体でのピッキング、流通加工、個包装など)や個配(宅配)への対応力などが求められるようになりました。

このような新たなニーズにお応えしていくため、今後は倉庫・輸配送ネットワークのより一層の拡充はもちろん、迅速な入出荷作業を実現するための物流ロボットやマテハン機器の開発・導入、受発注業務を代行・サポートするための情報システムの高度化、販促支援につながるマーケティングツールの提供などにも取り組んでいく方針です。

食品メーカーや食品卸向けの業務で培ってきたノウハウに、ネット時代の物流に不可欠な機能を新たに加えていくことで、お客様にご満足いただける高品質なコールドチェーンソリューションをお届けしていきます。
コールドチェーンとは
1. コールドチェーンとは?「温度をつなぐ」仕組み
コールドチェーンは「温度をつなぐ」ことが本質
コールドチェーンとは、生産から消費までの全過程で適切な温度を維持し、食品の品質と安全性を確保する仕組みです。低温物流が「保管・輸送」に特化するのに対し、コールドチェーンは調達・加工・流通・販売までを含み、サプライチェーン全体で温度管理を徹底することを目的としています。

しかし、コールドチェーンは単なる温度管理にとどまらず、サプライチェーンの可視化やリスク管理にも関わり、企業の競争力を左右する重要な要素となります。
特に食品業界では、コールドチェーンの構築が鮮度保持・安全管理・食品ロス削減の観点から不可欠です。また、EC市場の成長により、従来の店舗流通だけでなく、個人宅への配送(ラストワンマイル)においても、厳格な温度管理が求められています。コールドチェーンは、生産から消費に至るまでの各段階で、適切な温度管理が求められます。特に、食品の品質維持において重要な以下の3つのプロセスに分けて考えることができます。
〔1〕生産・加工段階:品質を守る初期管理

食品の品質は、収穫や加工の段階での温度管理に大きく左右されます。コールドチェーンの最初の工程であるこの段階では、たとえば生鮮食品は収穫直後から劣化が始まるため、すぐに予冷して適切な温度を維持することが重要となります。加工工程では、たとえば冷凍食品なら、急速冷凍を行うことで氷結晶の成長を抑えて細胞組織への影響を軽減し、解凍時のドリップを抑えやすくなりますし、精肉の場合は、低温管理を徹底して菌の増殖を防ぎながら熟成を進め、品質を維持します。こうした適切な温度管理がコールドチェーンの品質維持の基盤となり、食品の鮮度や安全性を保ち、消費者の満足につながるのです。
〔2〕保管・流通段階(低温物流):安定供給の要

生産・加工を終えた食品は、コールドチェーンの中核を担う保管・流通プロセスにおいても適切な温度を維持することが求められます。低温倉庫では、食品に適した温度帯で管理し、温度変動を抑えて品質劣化を防ぎます。輸送時には、冷蔵・冷凍車両やリーファーコンテナを使用し、外気温の影響を受けないよう管理します。IoT技術を活用したリアルタイム監視などにより、温度異常を即座に検知し、必要な対応を迅速に行うことで、コールドチェーン全体の安定性を確保します。食品の流通経路が複数の拠点を経由する場合でも、それぞれの段階で適切な温度を維持することが安定供給の鍵となります。
〔3〕小売・配送段階:消費者に届くまでの品質管理

近年、EC市場の拡大により、小売店舗だけでなく個人宅への直接配送が増えています。しかし、ラストワンマイル配送では、小口・短時間輸送が主流となり、温度維持が課題です。店舗では冷蔵・冷凍設備の整備が進む一方、宅配では特殊保冷パッケージや蓄冷材を活用し、輸送中の温度変化を抑える工夫が求められます。特に冷凍・冷蔵食品は、高品質を維持するため、配送方法の最適化と精密な温度管理が欠かせません。
2. コールドチェーンの重要性
「コールドチェーン」が食品の価値を守る
コールドチェーンは、生産者・メーカー・小売業・消費者まで、食品に関わるすべての人にとって欠かせない仕組みです。適切な温度管理があるからこそ、食品の価値が守られ、安全で高品質な商品が安定して供給されます。また、持続可能な社会の実現にも貢献しています。では、なぜコールドチェーンが食品業界と社会全体において不可欠なのか、3つの視点から説明します。

〔1〕鮮度・品質を維持し、「おいしさ」を届ける
食品の品質は「見た目」「食感」「風味」など、消費者の評価に直結します。特に生鮮食品や加工食品は、温度変化に敏感で、適切な温度管理ができなければ劣化が進み、味や品質が損なわれてしまいます。
コールドチェーンの確立により、収穫・製造直後の鮮度を維持し、高品質な状態で消費者に届けることが可能になります。
〔2〕食品ロスを削減し、持続可能な社会へ
食品廃棄は企業のコスト増加要因であると同時に、社会全体の課題でもあります。温度管理が不十分だと、配送中や保管中に食品が傷み、廃棄せざるを得ないケースが増えます。
コールドチェーンが整備されているからこそ、適切な温度での保管・輸送が可能となり、消費期限を延ばし、食品ロスを大幅に削減できます。これにより、環境負荷の軽減にもつながります。
〔3〕 EC・食品宅配市場の成長を支える
冷凍食品やチルド商品を扱うEC市場は急成長しており、個人向け宅配需要も拡大しています。しかし、消費者の手元に届くまでに温度管理が徹底されていなければ、品質劣化や食品トラブルにつながります。
コールドチェーンがあるからこそ、冷凍・冷蔵食品を安全に配送でき、ECや食品宅配サービスの成長が支えられています。
これらの市場ニーズに応えるためには、食品の流通全体で『温度をつなぐ』仕組みが不可欠です。生産・加工・保管・配送の各段階で適切な温度管理を行うことで、食品の価値を最大限に維持し、消費者に安心・安全な商品を届けることができます。コールドチェーンは、食品の価値を守り、持続可能な食文化を支える重要なインフラです。
3. コールドチェーンが求められる理由
食品業界を取り巻く環境変化とコールドチェーンの役割
市場環境や消費行動の変化により、食品の流通構造は大きく変わりつつあります。利便性を重視する消費者ニーズの高まり、人手不足に伴う物流の効率化、新技術の進化など、食品業界を取り巻く課題は多岐にわたります。こうした変化に対応し、安定した食品供給を実現するためには、より高度で効率的なコールドチェーンの構築が不可欠です。本章では、食品業界におけるコールドチェーンの必要性を、市場と時代の変化という視点から解説します。

〔1〕多様化する消費者ニーズへの対応
消費者のライフスタイルの変化により、食品の流通にも大きな変化が起きています。冷凍食品や簡便調理食品の需要が拡大し、単身世帯や共働き世帯の増加に伴い、小口配送や即時配送のニーズも高まっています。
また、「安全・安心」への意識の高まりから、商品のトレーサビリティ(生産・流通履歴の可視化)が求められ、流通過程での温度管理をリアルタイムに監視する仕組みの導入も進んでいます。
コールドチェーンの高度化により、こうした消費者のニーズに応え、適切な温度管理を徹底した食品供給が可能になります。
〔2〕気候変動と食の安定供給
近年、異常気象や気候変動の影響により、食料生産や流通に大きな影響が出ています。気温上昇に伴い、食品の劣化リスクが高まり、従来の温度管理だけでは品質維持が難しくなるケースも増えています。また、自然災害による物流の寸断が発生した際、適切な冷蔵・冷凍設備がなければ、食品廃棄の増加や供給不足につながる可能性があります。
こうした環境変化に対応し、安定した食の供給を実現するために、コールドチェーンの整備がより一層求められています。
気候変動リスクを考慮した低温輸送ネットワークの構築や、災害時にも機能する冷蔵・冷凍インフラの拡充が、持続可能な食品流通を支える重要な要素となっています。
〔3〕 食品のグローバル化と流通の複雑化
食の多様化が進み、国内外からの食品調達が一般化する中で、流通の複雑化が進んでいます。生鮮食品や加工食品の輸送距離が長くなり、複数の流通拠点を経由するケースが増加。これにより、各段階での温度管理の一貫性がより重要になっています。
さらに、国産品でも地域特産品の全国展開や、都市部と地方の流通格差の解消が求められ、鮮度を維持したまま輸送するためのコールドチェーン整備が不可欠になっています。
食品の流通経路が複雑化し、輸送時間が長くなるほど、適切な温度管理を維持できるコールドチェーンの重要性は高まっています。
コールドチェーンの必要性はますます高まる
消費者ニーズの変化、気候変動によるリスクの拡大、食品流通の複雑化など、市場環境は大きく変化しています。食品の品質を維持し、安全で安定した供給を実現するためには、温度管理を徹底したコールドチェーンの構築が不可欠です。
今後も、より精密な温度管理や効率的な流通ネットワークの整備が求められ、コールドチェーンは食品業界全体の競争力を左右する重要な要素となっていくでしょう。
4. コールドチェーンを支える技術
「温度をつなぐ」ための技術革新
コールドチェーンでは、単に低温環境を確保するだけでなく、「温度をつなぐ」ための技術が不可欠です。食品の品質を維持するには、生産・保管・輸送・販売のすべての過程で温度管理を徹底し、温度変化のリスクを最小限に抑えることが求められます。本章では、コールドチェーンを支える主な技術を4つの視点から解説します。
〔1〕高精度な温度管理技術

コールドチェーンの核心は、食品を適切な温度で管理し、品質劣化を防ぐことです。近年、IoTを活用したリアルタイム温度監視が進化し、輸送中や保管中の温度変化を即座に検知できるようになっています。これにより、異常が発生した際の迅速な対応が可能となり、安全性が向上しています。 また、急速冷凍技術の進化により、食品の細胞破壊を抑えながら冷凍することで、解凍時の品質低下を最小限に抑えることができます。
【例】:IoT温度監視システム、ブロックチェーンによるトレーサビリティ、急速冷凍技術
〔2〕省エネ・環境対応型冷却技術

食品の低温管理には多くのエネルギーを要するため、省エネ・環境対応技術の導入が重要視されています。例えば、冷蔵倉庫では高効率冷却システムや自然冷媒を使用した冷却設備の採用が進んでおり、従来よりもエネルギー消費を抑えながら安定した温度管理を実現しています。
また、配送段階では蓄冷式コンテナや太陽光発電を活用したエコ冷凍倉庫などが導入され、環境負荷を低減しながらも安定した温度維持が可能になっています。
【例】:高効率冷却設備、蓄冷材を活用した配送技術、自然冷媒冷凍機
〔3〕コールドチェーン対応の包装・保冷技術

食品が消費者に届くまでの品質を維持するためには、適切な包装・保冷技術が欠かせません。特にECや個人向け配送の拡大に伴い、小口配送でも温度を維持できる技術が求められています。
近年では、高性能保冷パッケージや真空断熱材を使用したクーリエボックスの開発が進んでおり、長時間の輸送でも一定の温度を保つことが可能になっています。また、蓄冷剤の進化により、ドライアイスに依存せず、環境負荷の少ない方法で低温管理を実現する技術も注目されています。
【例】:高性能保冷パッケージ、真空断熱ボックス、環境配慮型蓄冷剤
〔4〕拠点間・輸送中の温度維持技術

コールドチェーンでは、生産地から消費者に届くまでの「温度の継続性」が重要です。しかし、輸送手段や保管設備が異なる拠点を経由する際、温度が乱れるリスクがあります。これを防ぐため、トラック・倉庫間の温度ギャップを最小限に抑える技術や、輸送時の温度変化を制御する仕組みが進化しています。
例えば、ドックシェルター(荷積み時の温度変化防止設備)の導入により、トラックと倉庫の間で温度変化を最小限に抑えることが可能になります。また、多温度帯対応車両の普及により、同じトラック内で異なる温度帯の食品を適切に管理することができるようになりました。
【例】:ドックシェルター、多温度帯対応トラック、温度センサー付きコンテナ
5. コールドチェーンの未来
持続可能な食品流通への進化
食品業界を取り巻く環境は大きく変化し続けており、コールドチェーンも進化を求められています。持続可能な食品供給の実現、脱炭素社会への対応、そして新たな消費スタイルへの適応が、これからのコールドチェーンの発展を左右する重要な要素となります。本章では、コールドチェーンの未来を見据えた3つのトレンドを解説します。
〔1〕脱炭素化と環境負荷の低減
食品物流は冷却設備や輸送に多くのエネルギーを消費するため、カーボンニュートラルへの対応が大きな課題となっています。これに伴い、冷蔵倉庫や輸送システムの省エネ化がさらに進み、自然冷媒を活用した冷凍設備、再生可能エネルギーを利用した冷蔵倉庫、電動冷凍トラックの導入などが拡大していくと考えられます。
また、コールドチェーン全体の環境負荷を可視化し、データを基に最適な運用を行うスマートエネルジーマネジメントの導入も進むでしょう。
〔2〕デジタル技術による精密なコールドチェーン管理
IoTやAI、ブロックチェーンなどのデジタル技術が進化することで、コールドチェーンの管理精度はさらに向上していきます。特に、リアルタイム温度監視システムの精度向上や、AIによる温度異常の予測・自動調整機能の強化が進むことで、リスクを未然に防ぐコールドチェーンが実現されるでしょう。
また、ブロックチェーン技術の発展により、食品の流通履歴を透明化し、トレーサビリティの信頼性を向上させる取り組みも加速します。これにより、食品の安全性が確保され、消費者がより安心して商品を選べる時代が到来します。
〔3〕 変化する消費スタイルへの適応
食品ECのさらなる拡大や、個人向け食品宅配サービスの多様化により、ラストワンマイル配送の高度化が求められています。今後は、ドローンや自動運転配送車を活用した非対面・無人配送の普及が進み、より柔軟かつ効率的な低温配送ネットワークが構築されるでしょう。
また、都市部では24時間対応の冷蔵ロッカーや、環境負荷を抑えた共同配送ネットワークの整備が進み、食品流通の選択肢が広がることが予想されます。
持続可能な未来を支えるコールドチェーンへ
コールドチェーンは、環境対応、デジタル技術の進化、消費スタイルの変化とともに発展し続けます。食品の安全性と品質を守るだけでなく、より持続可能で効率的な流通の実現が求められています。これからのコールドチェーンは、単なる「低温物流」ではなく、社会や環境と共生する新たなインフラとして、その価値をさらに高めていくでしょう。